教授からのお祝いメッセージ
田上不二夫先生からのメッセージ
(2016年3月)
東京福祉大学・大学院 心理学部心理学科教授
筑波大学大学院名誉教授
教育学博士
日本カウンセリング学会理事長
カフェ取材・新聞記者とのやりとり
(記者)カフェ併設のカウンセリングオフィスは珍しいのでしょうか? また、その利点、可能性を
どう考えられますか?
(教授)カフェ併設のカウンセリングオフィスは珍しいと思います。カウンセリングというと精神的
病気にかかっている人が行くところと思っている人が多いのではないでしょうか。カウンセ
リングというのは本来、人やシステムをエンパワーして、充実した社会生活を送れるように
お手伝いする専門的活動です。
カフェ併設というのは、ちょっと気持ちがくじけたとき、だれかに話したいとき、会社で
嫌な思いをしたとき、子育てで疲れたとき、すこし元気がないとき、気持ちが落ち込んだと
きにおいしいお茶を飲んで仲間と静かに語り合う空間として、コミュニティーで人々が互い
に支え合うことが大切です。少し元気をもらえるようなカフェになればと願っています。
とても落ち込んでいるときには、専門家の高谷さんがいます。
(記者)高谷様のご活躍についてメッセージをお願いできたらと思います。
(教授)高谷さんは筑波大学の社会人大学院でカウンセリングを学んだ後、日本カウンセリング学会
の認定カウンセラーの資格を取りました。北海道から学会に頻繁に出席して研鑽を積んでい
ます。帯広ではスクールソーシャルワーカーなどの仕事で、めざましい働きをしている人と
して、私は注目しています。福祉の専門誌にも複数の論文が掲載されています。
高谷さんはもともと福祉について勉強している人で、困っている人のサポートが身につい
ています。カウンセリングは面接室の中にこもっていてはダメです。身軽に動いて人とつな
がり、人と人をつなげて、人を活かす社会的資源を活用した支援が大切です.高谷さんは、
それがとても上手な人です。
いろいろな人が集まってきて、ホッとできる空間となることを期待しています。
大川一郎先生からのメッセージ
(2016年3月)
筑波大学大学院カウンセリングコース教授
筑波大学付属中学校・高等学校校長
高齢者心理学専門
カフェ取材・新聞記者とのやりとり
(記者)カフェ併設のカウンセリングオフィスは珍しいのでしょうか?
(教授)どの位の数のカフェ併設のカウンセリングオフィスがあるかは、把握していませんが、東京では
いくつかの数のカフェ併設が見受けられます。また、最近、認知症の人、家族、専門家、地域住
民が集い、「交流」や「情報交換」などを主な目的とする「認知症カフェ」も増えてきています。
高谷さんのカフェ併設のカウンセリングオフィス開設の目的は、アメリカ等でカウンセリングが
身近にあるように、カウンセリングに対する垣根をまず下げることにあるかと思っていますし、
「交流」や「情報交換」の場としての機能をもたせようということも狙われているかと推測して
います。
「どんな小さなことでもいいですから、ちょっと話してみませんか。話しているうちに課題が整理
されてくるかもしれませんし、気持ちもすっきりしてくるかもしれません。一人でいろいろと思い
悩むよりも、お茶でも飲みながら話してみませんか。お腹がすいたら、軽い食事でもどうですか…。
いろいろな人が集まるので、気の合う友達も出来るかもしれません」、そんなイメージです。
このような視点からカフェ併設型カウンセリングオフィスを考えていったときに、もし、上記の
ような機能をもつ場所が身近にあれば、個人に関わる問題が大きくなる前に専門のカウンセラーと
一緒に問題や解決法を整理できるので、個人の福利にとっては大きなメリットがあるかと思います。
また、近隣のいろいろな人が集まってくる場となるかとも思いますので、自然と「交流」や「情報交
換」の場となっていくのかと思います。このような場は、実は、友人関係や職場での仲間関係の中で、
自然発生的に存在しているのですが、そのような場を持たない人にとっては、うまく入り込むことが
出来れば、その方にとっては、得難い場になるのではないでしょうか。うまく入り込める媒体として、
「カフェ」を用いるということなのだと思いす。
(記者)高谷さんのご活躍についてメッセージをお願いできたらと思います。
(教授)このカフェ併設型カウンセリングオフィスの成否は、ひとえに高谷さんの存在にかかっているという
ことに尽きるかと思います。
高谷さんが修了された筑波大学生涯発達専攻カウンセリングコースで毎年5月に開催される
Homecoming Day の懇親会で、いつも地元帯広からアスパラガスやじゃがいもなどの食材を東京キャ
ンパスに持参いただき、100人近くの参加者に北海道の手料理をふるまっておられます。ここに見られ
るような「ホスピタリティ(心からのおもてなし)」が高谷さんの持ち味だと思っています。
あと、高谷さんの笑顔もとっておきです。どうぞ、この笑顔とホスピタリティを遺憾なく発揮されての
展開を期待しております。
ただ、気をつけていただきたいことが2つあります。一つは、冒頭で記したように、「個人の相談の
場合、プライバシーに関わるデリケートな問題を扱いますので、秘密性が極めて高い」ということを常
に念頭において欲しいということです。多くの人が集まる場となればなるほど、しっかりと区分けをす
ることが必要になってくるかと思います。
二つ目は、一つの場所に大勢の人が集まるほどに、いろいろな人間関係の力動が生まれてきます。
いろいろな思わぬことが起こります。例えば、認知症カフェがうまく機能しない場合の理由の一つがこ
こにあります。その人間関係の力動を俯瞰しながら、一人一人の相談者に関わっていくことが必要にな
ってくると思います。常にアンテナを張り、諸々の事態について予想をし、対処していってください。
ここが、1対1だけで、相談が完結するカウンセリングオフィスとの大きな違いかと思います。どうか、
近隣の人にとっての、欠かせない場に育てていってください。応援しています。
あたたかい励ましのことば、ありがとうございました。
支えになります。